音の「空間」を体感する。 和楽器に学んだ桐ヘッドホン。

こういうものが欲しい、という世のニーズがあったわけではありません。この製品を生み出したのは、プライドと好奇心です。技術者が、己の理想とする音の表現にいかにたどり着くか。

開発の合言葉はただ一つ、「生きた音」。

目を閉じて、その音を聞いた時、それが奏でられているまさにその場に居合わせるかのような臨場感を生み出したい。その実現の過程で行き着いた、ひとつの形態がヘッドホンでした。耳を覆い、聴く人を純粋に音と向き合わせる。だからこそ実現できる体験がある。しかしそれは、常識の枠を超えた、ヘッドホンの表現の限界に挑む試みでした。

「生きた音」の再現が、なぜ必要なのか。それは、日本のオーディオメーカーとして、日本人の感性に特別響く音響機器を作りたいと思ったからです。日本人は特別な耳を持っていると言われます。

欧米人にとってはノイズとなる、雨の音、風の音、虫の声。その音に日本人は季節の情景を想像する。歌声を聞けば、その歌い手の表情を、込めた感情を想像する。音が鼓膜を震わせた瞬間、脳裡に映像イメージが浮かび上がる。その豊かな感性を十分に楽しませる音とは、より鮮やかに映像を想起させる生々しい現場の音なのです。

生々しい、ありのまま音を再現するためには、越えなければならないハードルがありました。
「空間」の表現です。オーケストラで例えるならば、どの場所でどの楽器が演奏されているのか。奏でられているひとつひとつの音の距離感を明瞭に再現すること。それが叶えば、現場に身を置いているかのような臨場感が生まれます。そのためには濁りのない音が必要でした。

どの音が強調されるわけでもない、自然な音。
そして、耳をすませても聞き取れない、しかし確かに音を構成している倍音までも奏でること。

耳と音源が近いため、構造や素材の、ほんのわずかな変化でも音の濁りが生まれてしまう。そこから雑音だけをどう取り除くか。何よりも、耳元で音を鳴らすヘッドホンでどう「空間」を再現するのか。構造も素材も、すべてが手探りでした。




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